はじまりは明治初年


◼️明治十二年の新装オープンの際の大売り出しチラシのイラスト
1868年、長く続いた江戸時代が終わりを迎え、激動の中で明治が産ぶ声をあげたころ、長野・善光寺の表参道で朝陽館は書籍の取り扱いを始めました。当時、書店は書籍を仕入れて販売するだけでなく、版木を入手して印刷・製本をおこなう出版の機能も持ち合わせていました。まだ本が高価な時代より流通の制約がある中で本の収集と製本を行い、時代の変化に合わせて新しい情報や娯楽を紹介し、市民のみなさまが文化を広げ知識を深めるお手伝いをしてきました。

朝陽館がある新田町の交差点は、善光寺につながる表参道と昭和通りが交差し、かつては長野市街の商いの中心地でした。祇園祭や真田大名行列、花魁道中などの祭のたびに多くの人々が集い表参道を埋め尽くすほどでした。

明治・大正・昭和・平成と時代は移り変わり、現在では、商圏の中心地は長野駅周辺へと移りました。この長い年月の間に表参道は中央通りと呼ばれるようになり、アスファルトで舗装され、布張りから木造トタン張り、そして鉄骨造りとアーケードも形を変えました。
今では、アスファルトは石畳となり、アーケードは撤去され、善光寺に一直線に伸びる石畳の荘厳な通りの姿に青空と静けさを取り戻しています。


街のカタチが変化し、モノの買い方が大きく変わるなかで、街の本屋が姿を消しつつあります。本の世界もアナログの「紙」からデジタルの「データ」化の波が押し寄せています。この便利さと手軽さを求める流れは変わることはないでしょう。 しかし、私たちは、「紙」の形の本を大切にしたいと考えています。本を手にした時の重さや手触り、本の作り手の思いが現れる紙質や装丁、インクや紙の匂い、ページをめくる音、こうした質感が物語に呼応して感情を揺さぶる一因になると思うのです。本を選び、時間を空けて読みふける行為は、情報が絶えず飛び込んでくる現代において大きなエネルギーを要する行いですが、その行いに応えてくれる、面白く、役に立ち、ときに救いとなる本がたくさんあります。
本屋は、「未知の本」と出会う場です。
私たちは、お客様が巡り会う本を一冊一冊さまざまな人を想像しながら選びます。本屋に入り書棚に並ぶ本の中からとっておきの本と巡り合ってください。その本の中に、あなたにとって生涯忘れない一冊が見つかることを願っています。
朝陽館では、手に触れて読むことの大切さを伝えたいと思い、初めて本を手にする幼児期から楽しめる絵本や児童書を多く取り扱っています。本を読むことで五感を刺激し、思考をさらに深めることで生活をより豊かに、人や社会とのつながりを築いていただけると幸いです。
思いがけない出会いのために。
これまでの150年も、
これからの100年も。
